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「茶の湯」の世界から、本質を学ぶ。

image(From Wikipedia)

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「もしも利休があなたを招いたら」(角川書店 著:千 宗屋)を読んだ。

茶道の世界で言われる、いわゆる「三千家」(表千家・裏千家・武者小路千家)のうちの武者小路千家のお家元さん「千 宗屋(せん そうおく)」さんが書いた「茶の湯」の世界とその本質を書いた本。

私の生まれは、兵庫県明石市で、夏休みはモリを持って海に潜り魚を突いたりして生まれ育ち、仕事はITエンジニアというおよそ伝統文化とはほど遠い職業を選択し、「お茶の世界」という深遠な世界とはまるで無縁な生活してきた。

しかし、たまたま縁があって京都に住む事となり、そして、その後、たまたま縁があってなぜか「茶道の茶器」を扱う会社の業務システムの面倒を見る事になった。

おそらく、この縁がなければ、死ぬまで「茶道と関わらない人生」を送っていた可能性は実に高い。

私の性分として、プロとして「良い仕事」をするためには、自分自身のこれまでの経験だけで判断するのではなく、「クライアントさんを良く知る」「クライアントさんと共感できるようする」という事が必要だと思っている。

この点、様々な職種の中でも「企画(プランナー)」「営業」さんなどは、クライアントさんと寄り添う事が仕事の本質になっているから、そういう意識を持った人は多いと思うけれども、「エンジニア」というクライアントさんとのコミュニケーションが少なそうなイメージの職業であっても、やはり「共感する」意識が大切だと思っている。

本当なら、全く知らない(本当に全然知らない)「茶道」という世界を知るためには、稽古に通うなど「体験」しなければいけないのは重々承知なんだけど、とりあえずまずは入り口として「茶道の世界」を学んでみようと思って本書を手に取ったというのが、経緯。

本書を読む事で、色々とお茶の世界の事は知る事ができたし、お茶の哲学的なことを「少しだけ」でも知る事ができたのは、大変有り難い。

ただ、せっかくのお茶の世界観に浸らせてくれた本に対して、ビジネスマン的な読み方をしてしまった自分が実に残念で、底が浅いと思いつつも、結局はそういう部分がどうしても印象に残ったので、書き出しておこうと思う。

今さら言うまでもないが、ビジネスでもお茶でもイノベーティブな産業でも伝統文化でも、何にしろ「本質」というのは、「共通」。

お茶の世界での話をいくつか抜粋してみたい。

「主客の話」

「どちらかが一方的にもてなすのではなく、もてなされるのでもなく。互いが相手の立場から相手をおもいやりもてなす。」

「もてなし=「サービス」ではない」

「サービスというのは、極端な話、相手の事を全く知らなくても成り立ってしまうもの。」
「本来、お茶に限らずもてなしというのは、相互方向のものだったはず」

「お茶の世界でも・・・人目を気にする人は・・・」

「相手にどう思われるかばかりに気を取られ、人目を気にしすぎると、だんだん虚飾化、虚栄化してしまいます。」

「人と同じ事をすることがお茶か?」

「同じ事をしていれば安心、という気持ちはわかります。でもその安心に安住してしまうと、そこから先の世界は全く広がらない。その人のお茶の世界は、そこで成長が止まってしまうのです。」

「茶の湯は、テクニックではなく精神」

「真似るべき、ならうべき、は形ではなく精神である。根底にある概念とかコンセプト」

「お茶の作法や稽古は分かりやすく理論的であればいいのか?」

「(分かりやすく説明した場合)知識として頭には入っても、経験に基づいた知恵として身に付かない。型に身をはめて繰り返していくなかで、はじめてパーンと気づいたものしか、本当の意味で「わかった」という事にはならない。」

などなど。

なんか、ビジネス目線で読んでしまって、実に申し訳ない気分で一杯。

しかし、これらの話はどうだろうか?
お茶の世界の話を読んでいるにも関わらず、ビジネスマンも身につまされると思う。
やはり、「本質」はお茶とビジネスの共通を感じずにはいられない。

ところで、この目線で取り上げた内容以外の「お茶の世界」の哲学や世界観の話の方が実に興味深くて面白く、この野生児(私)をして、実際に「茶道をやってみたい!」とさえ思えるくらい深い話だった。

ビジネスマンが短命なビジネステクニックや虚飾化されたセミナーにお金を落としまくるくらいなら「お茶」をやった方が、成績が上がるかもしれないね。

ちなみに、クライアントさんのところへ打ち合わせで訪問すると、お抹茶をたてて、お茶菓子も一緒に出してくださる。
「クライアントさんから、心のこもったおもてなし」を受けると、私も、精一杯仕事で返そうという気持ちになり、信頼関係も深まり、好循環を生む。

「おもてなしは双方向で成り立つもの・・・」

なるほど。

結構なお点前でございました。

「もしも利休があなたを招いたら」(角川書店 著:千 宗屋)

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