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やっぱり、鳥は恐竜だった・・・。「恐竜学」

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大人になると(特に社会人になると)、インターネットにしろ、本や書籍にしろ、日常的な情報収集の対象が、どうしても仕事絡みやビジネスに関係するものになりがち。
そして、自分もご多分に漏れず。
もちろん、身近な話題に自分の情報センサーが集中するのは、生活者として当然なので、特に悪いことではない。

とはいえ、「また最近、仕事関係の情報摂取ばかりで、視野を広げるための教養的な読み物あまり読んでないかもな〜」なんて、なんとなく思ったりしていたところ・・・。

たまたま、ツイッターで「え?そうなの?」という情報を見る。

「鳥は、恐竜である。それが学会の定説。」

確かに、鳥は「恐竜の近縁・子孫」とか言われ始めていたのは知っていたけど、もはや「鳥=恐竜」なんだ。

ここ数年、鳥好き(主にインコやオウム類)な上に、小学生時代は恐竜にもしっかりドハマりした私としては、二重の意味で興味津々。
ティラノサウルス!トリケラトプス!ステゴサウルス!アロサウルス!スズキフタバリュウ(ドラえもんから)!
などと叫んでいた遠いあの頃のアツい思いが少し蘇った。

ということで、すぐに恐竜について知りたくなり、「大人のための『恐竜学』」(著:土屋 健 監修:小林 快次 祥伝社新書)を買って読んだ。

本書の構成は、「インターネットで大人からの恐竜に関する質問を募集して、恐竜学の博士がそれらに答えていく。」というシンプルな形式で、一つのセクションが短いのでとても読みやすい。

知識の更新と視点の変化を楽しめる

総合的な感想としては、「私の知っていた恐竜の知識」と「今の恐竜の定説」は相当変わっている、というのが全体としての実感。
本書にも書いていたけど、特に近年の恐竜学の進歩は著しいらしく、かなりのスピードで新事実が発見され、学説が更新されていったらしい。

さらに、そもそも子供の頃って、恐竜の名前や姿形などの表面的な知識を蓄えて喜んでいたけど、「そもそも、恐竜の定義はなに?」みたいな本質的なことや「恐竜の体温は何度?」みたいな細かいところには、あまり興味がないし、それが指す意味も分からない。

しかし、大人としては、「恐竜とワニやトカゲの爬虫類って似てるけど何が違うの?具体的にどういうこと?」「恐竜の子育ては?」みたいなより具体的な疑問があって、それにすべて答えてくれる本書は、本当に「いい大人」にとっても勉強になった。

だいたいの大人が、恐竜は小学生で卒業してしまって、そのまま触れることもなくなるもの。
なので、大人にとっては、この本を読むことで、知識が大きく更新されている事に驚き、しかも、小学校時代からの旧友に会うことで、自分自身の視点や考えが大きく変わっていることにも驚く、二重の楽しみ方ができる。

ということで、各パートで個人的に好きだった話は・・・。

本書の一番初めに提起される問題。

Q: そもそも「恐竜」って何?

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A:「トリケラトプスと鳥類の最も近い祖先から生まれたすべて」

これが学術的な定義だそうです。知ってました?(^^;
っていうか、え??それって?どういう意味?
そもそも、トリケラトプスだけなんで名指しなの?
など、いきなり核心に迫る話。

なんでそういう定義になっているのか?
は、少し込み入った話で少し長くなりそうなので、ブログでは割愛。

Q: クビナガリュウやプテラノドン(翼竜)は、恐竜じゃない?

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A: 恐竜じゃない。

そもそも、恐竜は、ワニやトカゲの現生爬虫類と違う存在だけど、クビナガリュウなどは、それ以上に恐竜より遠い存在になるっぽい・・・。
そうですか、そんなにも遠縁なんですか。
本書を読むまでは、私にとってプテラノドンもクビナガリュウも恐竜でした・・・。

Q: 恐竜は恒温動物か?変温動物か?

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A: その前に、近年は、「恒温動物」「変温動物」という言葉は使われず「内温性」「外温性」が使われます。

えーー!
いやいや、恐竜以前に、それって理科だったか、生物だったかでしっかり授業で習った言葉なんですが(^^;

それはさておき、今の学説的には、内温性と外温性、ハイブリッドなどいたのではないかと言われているそうです。

ちなみに、別に「恐竜の体温は?」という質問もあったりします。
個体差があったようですが、ティラノサウルスで、30℃前半くらいだったとか。

Q: 恐竜の寿命は?

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A: 個体差あり。ティラノサウルスでいうと、30歳前後。

本書内で、色々な恐竜個体の寿命が紹介されていますが、代表的なティラノサウルスで30歳前後だったらしいです。

ちなみに、他の質問回答でも何度もでてくるティラノサウルスですが、恐竜全体の中でも、
ティラノサウルスだけはかなり特別な存在だそうです。

恐竜はよく、「草食恐竜」「肉食恐竜」と2パターンで分けられるわけだけど、ティラノサウルスだけは「超肉食恐竜」という呼ばれる場合があるそう。

多数存在する恐竜の中でもティラノサウルスだけはその超越した能力と身体性能ゆえに、学術的にも特別視されることが多いらしい。
やっぱり、ティラノサウルスってすごいんですな・・・。

というような感じで、一般公募の60個近い恐竜に関する質問に、先生が的確に答えて、わかりやすい解説で非常に勉強になります。

で、鳥の話は?

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ちなみに、冒頭にした「鳥は恐竜である。」ということも本書内でしっかり触れられている。

本書では(てか、学術的には)、そもそも鳥は恐竜の1グループなので、「みんながイメージする恐竜」という場合は、厳密には「鳥類以外の恐竜」という事になるらしく、もはや争いなしと。

つまり、鳥も恐竜なんだけど、ティラノサウルスやトリケラトプスなどのジュラ紀や白亜紀の「みんなが思ってる恐竜」と混ぜて話をしちゃうと、話が混乱するから、一応、一般的に恐竜を語るときは「鳥類以外の恐竜」=「いわゆる恐竜」ってことで語られることが多いようだ。

やっぱり、鳥は恐竜だった・・・。

そんな事を頭の片隅に置きながら、朝方や夕方にカラスさんが、カーカー鳴いて飛んでるのを聞くと、何か太古にタイムスリップしたような気になれたり。

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鳥は思考するのか?生涯をかけた挑戦

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アレックスと私」原題(Alex & Me):アイリーン・ペパーバーグ著 幻冬舎
を読んだ。

この「アレックスと私」は、2008年にアメリカでベストセラーになっているらしく、2010年に日本語訳の初版が出版。
日本で発売されてから、もう6年も経つが、原本も日本語版も全く存在を知らなかった。

鳥を見ようとたまたま冷やかしで入ったペットショップにこの本が並んでいて、パラパラとめくると、天才インコ(ヨウムという種類)と科学博士の「動物の思考」についての記述が実に面白そうだった。

また、最近、人工知能(AI)の発展が目覚ましく、エンジニアである私も「思考」という分野に興味があったのも相まって早速購入。

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本書の全体の流れは、MIT(マサチューセッツ工科大学)を卒業し、ハーバード大学院を卒業した女性科学博士ペパーバーグさんと、アレックスという名のヨウム(アフリカ原産の大型インコ)との30年に及ぶ研究と人生ストーリー。

アレックスは、「音を繰り返すだけのオウム返し」ではなく、実際に100語程度の英単語を覚え、しかもその英単語を組み合わせて文章を作って発音し、簡単な会話や意思表示ができたらしい。
また、色を表示する言葉を覚え色を識別し、物の形状と言葉もつないでいた。
さらに、数字の概念を認識し1〜6まで数字を使った簡単な計算もできた。
人間以外の霊長類の中でも最も賢いとされるチンパンジーですら理解できなかった「ゼロの概念」を理解していたと言われている。

個人的には知らなかったのだが、ヨウムのアレックスは、アメリカではスター扱いだったらしく頻繁にテレビ・雑誌・新聞を賑わせていた天才インコだそうな。

一方、ペパーバーグ博士。

彼女は、MIT(マサチューセッツ工科大学)という一流大学を卒業し、ハーバード大学院も卒業しているにも関わらず、「研究室」は「男の職場」という女性軽視の閉鎖的な環境の中で、長期雇用は獲得できず、やっと大学と契約できても臨時研究員だったり、すぐに解雇されたり、大学から研究資金援助が受けられず研究資金集めに奔走したり、と。

立派な肩書とは裏腹に非常に困難な研究者としての道を歩み続ける。
(今でこそ性差別は少なくなったようだが、70年代80年代のアメリカの研究現場では根強かったみたいだ。)

さらに、科学技術分野では「動物は思考しない」という学術研究が支持されており、そのような意見が支配的な科学技術界に対して、「動物の思考」というテーマで挑戦するもんだから、余計に異端とされ困難さが増すというデフレ・スパイラル。

動物の言語研究というものは、「でっち上げ」「思い込み」以外の何物でもない。

このような何年・何十年にも渡る学会の支配的意見に対して、アレックスと組んで冷静沈着に、そして可能な限り科学的な実験方法と、純粋な客観的データを集めて「実は、鳥が思考している」という実証を積み重ねていく。

一般の動物好きの人なら、動物が思考していても何もおかしいと思わないかもしれないし、犬も猫も人間とコミュニケーションができると言ってもすんなり受け入れる人も居るかもしれないが、科学の世界ではそうは行かない。
問題を細分化し、反証不可能なまでに実証しなければ認められない。

それを、霊長類(人に近いと言われているサル科)ではなく、一羽の鳥が成し遂げていく。

そして、最終的に、「思考」や「言語」というのはあくまでも霊長類の長である「人間」にのみ与えられた特殊な能力という固定概念を崩していく。

どんな動物でも思考しコミュニケーションを行う、能力を持っているか持っていないかの二項対立ではなく、あくまでも「程度の問題にすぎない」という認識を広めるまでになった。

そして、アレックスは、30歳という若さ(ヨウムの寿命は50年)で突然この世を去る。

ちなみに、科学的研究で大きな成果を残していくアレックスだが、一方でテレビなどではおちゃめな鳥として取り上げられまくっていたらしい。
(特に80年代後半から90年代?)
Youtubeで”Alex Parrot”などで検索すると無数の動画がでてくる。

知らない人の方が多いだろうけど、このヨウムという種類のトリ(大型インコ)は、日本でもペットとしてすごく人気があって、トリをある程度の数扱っているペットショップに行けば大体会うことができる。
近所のコーナンのペットコーナーにもいたりする。(価格は30万くらいするけど)

日本にも「バズ君」という名の人気のアイドルヨウムがいる。
(ヨウムYoutuberか。)
彼の天才っぷりも見ていて楽しい。歌も上手いし、言葉も上手い。

「かわいい!」と一時期ネットで大人気になったのが、「急にもよおして、う◯こした後に、飼い主に報告する」動画。

いつの間にか、人は人間の社会だけが世界だと思い込みがちになる。
みんな忙しいし、無理も無い。

しかし、人の文明の下に自然界があるというのは現代的(西洋的?)な考え方であって、かつて人は、自然界と自分たちは同じ世界に生きていると強く意識して生きてきた。

もし、「人以外の動物たちもちゃんと思考している」ということを受け止めるのであれば、人は自然界に対して傲慢に振る舞うことはしづらくなるのではないだろうか。

最近は、インコ女子コトリ女子という言葉が流行っていたり、猫カフェならぬ、コトリカフェインコカフェも次々とオープンし、小鳥ブームが来ているそうな。

そんな中、鳥も少なからず思考していると思うことができれば、また違った接し方ができ、楽しいバードライフになるんじゃないかな。
(少々青臭く説教くさい締めではあるが、たまには思い返えすために。)

アレックスと私:幻冬舎

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「文系プログラマーの数学知識 基礎の基礎」を読んで。

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何年か前に何気なくブックオフで買った本だけど、1ページも開くことなく放置してたので、ようやく読んでみた。
これだけはおさえておきたい 文系プログラマーの数学知識 基礎の基礎」(技術評論社)

読み終えた感想を先に一言で表現してしまうと。
エンジニアにとって、絶対に陳腐化しない最強のライブラリは『数学』だなと再確認
という事になるかな。

エンジニアをやっているとは言え、仕事上で「微分」や「積分」を使ったりすることは殆ど無く、言語仕様やアルゴリズムや諸所のフレームワークの知識等を常時仕入れて頭のなかで整理しておけば、それなりに「できるエンジニア」として見られるし、実際に開発は得意な方だと思っている(手前味噌)。

しかし、年々技術の進歩スピードが指数関数的に上がってきていて、このままいっちゃうとマジでシンギュラリティー(人工知能が人類の知能を超える地点)まで行っちゃうんじゃないか、とさえ思えるスピードを感じたりしているのも事実。

以前、「スーパーエンジニア」は、開発に関わることはなんでもできた。
インフラ周りもバックエンド開発もディスクトップアプリも、なんでも自在に開発していたんだよね。
でも、今では、それぞれの分野がそれぞれで猛スピードで進化しているから、たとえスーパーエンジニアでも全てを捉えるなんてことはもはや不可能な時代になっている。

元々サーバーサイドエンジニアで、Java C# Ruby Pythonでゴリゴリサーバー周りを開発し、ベータベースもインフラ構築もお手の物で仕事をしていた。
部署が変わって、スマホアプリ開発に2年ほど没頭し、スマホアプリ開発にも慣れてきたあたりで、部署替えで再びバックエンド開発にジョインすることに。

元々サーバーサイドの知識は豊富だったから余裕だろうと思ったら、2年経ったらチームメンバーの会話に全くついていけなくなっていた。
なんてことは、日常茶飯事。

ソフトウェア業界の進化スピードは異常に速いのは承知していても、分野がどんどん細分化されて、その細分化した先でさらにスピードを進化を続けるような「ねずみ算的な進化」は流石にもう追ってられない。

つまり、「今後さらに進化する。」ではなくて、「今後さらに進化スピードが上がる」という事態。

当然ながら、覚えた知識や経験は、どんどん陳腐化していく。(絶対的に避けられない)
今最先端を走っていて、イケイケな気分だったとしても、ほんの少し手を抜いたら、あっという間に陳腐化。

そうなってくると、エンジニアとして生きるためには、特定の技術や知識に固執するのではなく、「その場その場に即応する」というスキルが非常に重要になる。

で、そういう即応するスキルって何か、っていうと、最新のフレームワークの知識でも、最新の言語仕様の知識でも、クラウドの使い方でもCMSの使い方でもない。
もっとプリミティブな知識ってことになる。

結局のところ。
突き詰めていくと、エンジニアに取って、理工系の教養が陳腐化しない最強のスキルなわけ。
それが、数学だったり、物理だったり、電子工学だったり。

と、前置きが長くなったけど。

この本は、そういったエンジニアさんたちに、勝ち残るためにプリミティブな知識を付けておきましょうという意図で出版されている。
(物理版もある→これだけはおさえたい ゲームプログラムの物理の知識 基礎の基礎

ちなみに、高校時代に大学受験科目の英・国・社だけ勉強して、数学と理科系はすべて捨ててたっていう「ド文系」な方にとっては、歯ごたえのある本かも知れない。

1次関数・2次関数、交点・中点
三角関数
行列、ベクトル
微分、積分
など、聞きたくもないような言葉がでてくるが、かなり上手に説明しているので、高校時代に比べてすんなりと理解できるんじゃないかな。

また、それぞれの数学が、プログラミングやソフトウェアの中でどのように使われているのか、数学とソフトウェアの関連もしっかりと触れてくれているので、文系の方だけでなく、理系の方でもエンジニア新人さんなどにはためになるかもしれない。

逆に、文系・理系問わず、数学は得意でした(仕事ではめっきり数学か離れているけど)って方にとっては、「読み物」のような感じでサラサラと読めて、軽い復習に良いです。
私個人的には、非常にサラッと読めて、懐かしさとともに、久々に数学熱に火を付けてくれる良い書籍だったかな。

業務で毎日数学つかってます、って方は全く不要。

日本は文系プログラマーさんって結構多いので、今後何年も業界で生きる最強スキルとして数学や物理の学習はオススメします。

結城先生の「数学ガール」集などに取り組もうかと思っている方は、その前に一読しておくといいかも。

これだけはおさえたい 文系プログラマーの数学知識 基礎の基礎

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