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「ハマるしかけ」というバイブルを読んだけど嵌らなかった。

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ここ数年、スタートアップ系のサービス開発に携わる事が非常に多い。

いわゆる「業務システム開発」と違って、システム設計・プログラミングと言ったソフトウェア開発スキルだけでなく、マーケティング・ブランディング・UXまで深く考える必要があり、そう言う分野のスキルも非常に大切になる。

ということで、「スタンフォード大学発」「スタートアップのバイブル」という帯に触発されて、「ハマるしかけ」(著:ニール・イヤール ライアン・フーバー)という書籍を購入して読んでみた。
(Amazonでは商品開発カテゴリーで、ベストセラー1位)

内容の総論としては・・・。

スタートアップのバイブルと書いているだけあって、いわゆるWEBサービスやアプリなどIT系サービスのサービスデザインについてのハウツーを体系化した内容。
「ピンクの文字」のタイトルに、釣りのような帯をつけているけれども、内容自体は至って真面目。
どこぞの出版社が連発するような、ピンクの表紙でひたすら煽りタイトルをつけて、中身スッカスカのビジネス書ではない。

ただ、スタートアップに関わった事がある人や、商品開発やサービス開発を日常業務にしている人たちにとっては、おそらく特に驚きも発見もそんなに無い内容かな〜と思う。
というか、相変わらずアメリカは「言葉にするのが上手い」「体系化するのが上手い」。
プロにとっては、普段から何気なく思考している事を、上手く文章にまとめてくれたと感じるんじゃないかな。
(逆に言うと、スタートアップやサービス開発に関わっているにもかかわらず、ここに書かれている思考をしていない人は、マズい。)

なので、個人的には、あくまでも個人的には・・・、あまり驚きがなかったので、サラッとまとめておこうと思う。

本書は、「ハマるしかけ」である「サービスをユーザーの習慣に組み込む仕組み」を「フック・モデル」というフレームワーク概念で体系化した。

では、その「習慣化を促す仕掛け」である「フックモデル」とはなにか。

フックモデルは、四つの要素から構成される。

・トリガー
・アクション
・リワード
・インベストメント

この4つの要素をまるでPDCAサイクルのように回す事で、サービスをユーザーの生活習慣に組み込ませ、サービスを成功ライフサイクルに持って行く。

1.トリガー

トリガーは、外的トリガーと内的トリガーの2つに分類される。
外的トリガーとは、ユーザーの周りに刺激となる情報を配置して、次の行動を指示する事。(まぁ、簡単に言うとコンタクトポイントとか。SEOとか。広報戦略とか。)
内的トリガーは、ユーザーの記憶を利用して、次に取るべき行動を連想させること。(外部刺激ではなく、ユーザー自身が行動のトリガーを引くように仕組みを作る。ユーザー自身の衝動を如何に起こすか。)

2.アクション

アクションの章は、実に心理学的に描かれていて、一言でまとめてしまうのが難しい。
マーケティング・行動経済学界隈では、ほぼバイブル視されているベストセラー「影響力の武器」などを読んでいるとすんなり理解出来ると思う。(たぶん、著者も「影響力の武器」や「予想通りに不合理」などに結構インスパイアされているんじゃないだろうか。)
ただ、アクションはシンプルに言うと、次のリワード(報酬)を得るために行われる行為。
アクションを起こすには、色々な要素・障害がある、特に障害を乗り越えてもらうためにはできるだけ簡単に、可能な限りシンプルにアクションできるようにデザインすべき。

3.リワード(報酬)

ユーザーは、基本的にこの報酬を得るためにトリガーを引き、アクションを行う。
報酬には、3種類ある。
社会的な報酬・他社とのつながり → トライブ
物理的な報酬や情報 → ハント
個人的な満足感 → セルフ
サービスデザインには、これらの3種類の報酬を1つ以上兼ねそろえておかなければならない。

4.インベストメント(投資)

投資とは、ユーザーが時間や行動をサービスに費やす事。
この投資が行われる事で、データ・コンテンツ・フォロワー・レピュテーションという形で、サービスの資産形成となる。
これらの資産が積み上げられる事で、ユーザーに新しいトリガーを引かせ、アクションを起こすモチベーションを増し、リワード(報酬)が増大する。というサイクルに入って行く。
つまり、ユーザーの起こした投資を上手くサービスの資産にし、再利用する仕組みが重要となる。

こうやって、以上の4つをフィードバックループのように回して行く事で、サービスをブーストさせることができる。

というのが、本書の「フック・モデル」と呼ばれるサービスデザインフレームワーク。

ということで、とりあえず、実に簡単にまとめてみたけれども・・・。
おそらく初めに書いたように、すでにスタートアップしている人やサービス開発を担当している方には、特別な目新しさはなく、それなりに分かっている事だと思います。
が、それを敢えて体系化して、フレームワークにしてみた所に本書の価値が有るのだろうと思う。

逆に、なんだか全然ピンとこない〜っていうスタートアップや新規サービス開発者は、一読しておいてもいいかも。

ハマるしかけ」(翔泳社  ニール・イヤール (著), ライアン・フーバー (著), Hooked翻訳チーム (翻訳), 金山 裕樹 (翻訳), 高橋 雄介 (翻訳))

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