私達にとっては気の遠くなるような遠い遠い過去の話。
私達人間が今生きている母なる大地「地球」に、人類の歴史を遥かに超える長い時代を生きつづけた動物である恐竜。
先日、「大人のための『恐竜学』」(著:土屋 健 監修:小林 快次 祥伝社新書)を読んで、「やっぱり、鳥は恐竜だった・・・。『恐竜学』」という記事を書いたけれど、その後も恐竜熱が収まらず。
長期間この大地に息づいていた彼らについて、大人の視点でもう少し深く知りたくなり、さらに恐竜本に手を出してしまった・・・。
今回読んだのは、「ティラノサウルスはすごい」という、実にシンプルかつ力強いタイトルの新書。
ちなみに、前回の「大人のための恐竜学」と同じタッグ、小林博士が監修し土屋さん著。
ある意味で、ティラノサウルスを主人公にしたスピンアウトバージョン。
・ティラノサウルス入門
前作「恐竜学」の書籍中に、
「数ある恐竜の中にあって、ティラノサウルスだけは特別。」
「何千種類といる恐竜は、基本的に、肉食恐竜と植物食恐竜(草食竜)に2つに分類される。が、ティラノサウルスだけは、肉食恐竜という分類を超えて、『超肉食恐竜』に分類されることもある。」
など、ティラノサウルスだけは他の恐竜とはかなり異質な存在であるような書き方がされていただけに、前作が伏線であったかのように本作。
本書の総論としては、もちろん「ティラノサウルス」だけに絞った話。
そして、子ども視点での「かっこいい」とか「強い」「大きい」という抽象的な話ではなく、大人視点で「データ分析によって裏付けられた」論証や考察を、非常に分かりやすく解説してくれているので、生物学的にティラノサウルスを理解する入門書としてオススメ。
ティラノサウルスは、私達と同じ地球上にいた(いる)生物・動物として、具体的にどのような身体能力を持ち、どのようなライフスタイルを持っていたのか。
そしてどのような経緯・進化によって過去に類を見ないこのような強烈な生物が生まれたのか・・・。
・恐竜の最終形態「ティラノサウルス」
そもそも、恐竜は古い順に「三畳紀」「ジュラ紀」「白亜紀」というおよそ1億5000万年間存在していた。
今西暦は2000年ちょい。
人間が文明を持った超初期が約1万年前くらい。
ということは、大体その1万5000倍の長さを恐竜は生きた。
その長い長い恐竜の歴史の中において、ティラノサウルスは「白亜紀の最後の最後」に登場している。
つまり、恐竜の歴史の中でみると絶滅寸前の「最後の恐竜類」。
進化論的には、恐竜の歴史上もっとも進化した「最終形態」がティラノサウルスだったという事になる。
(恐竜が絶滅しなければ、もっと進化しただろうけど。)
ドラゴンボールやポケモンじゃないですが、
ティラノサウルスが、「進化系の最終形態」だったという事実だけでも、何やら「すごそう」な予感はする。
ちなみに、ティラノサウルスが現れるもっと前である「ジュラ紀」の恐竜の覇者は肉食恐竜の「アロサウルス」。
このように、ジュラ紀はアロサウルスが生態系の頂点として何千万年も君臨し続けることになるのだが、アロサウルスとティラノサウルスは生物学的には遠いらしい。
つまり、アロサウルスはティラノサウルスの先祖ではない、と。
・圧倒的な肉食性能
恐竜史上だけでなく「地球の歴史」から見ても、ティラノサウルスほどの肉食性能を備えた生物はいない。
その特徴として・・・。
1.凄まじいあごの破壊力
ティラノサウルスの絵を見たことがあれば、「あんな大きな口と歯を持っていたら、当然噛む力もすごいでしょ。」と思うわけだが、奴らの破壊力はその一般的な想像力を軽く超えてくる。
まず、現代の肉食獣の代表格といえば、ライオンやトラ。
奴らも強烈なあごのチカラを持っていて、自分と同じくらいの大きさか、自分よりも大きい獲物を仕留め、肉を削いで食べる。
さすがの肉食性能である。
しかし、ティラノサウルスは違った。
確かに、ライオンやトラのように、自分と同じ大きさか、それ以上の大きさの獲物を強力なあごで仕留めて・・・。
その大きな獲物を、「骨ごと粉砕して食べる」のである。
ジュラ紀の覇者アロサウルスですら、獲物を骨ごと粉砕して食べたりはできなかった。
ティラノサウルスのあごのチカラは、アロサウルスの6倍もあったとの研究データがあるらしく、その顎のチカラの凄まじさは、想像をはるかに超える。
なのでティラノサウルスの糞の化石にのみ「骨粉」が混じっているらしい。
このような恐竜(および生物)は、まさに唯一無二。
(人間が小魚を骨ごと食べるのとは訳がちがう。)
2.圧倒的な嗅覚
ティラノサウルスの頭蓋骨の研究から、嗅球と呼ばれる嗅覚を司る機関がとても大きい事が分かってきた。
しかも、その嗅球は、これまでのどんな肉食恐竜よりも大きいと推測されている。
つまり、ティラノサウルスは、アロサウルスなどの他の肉食恐竜よりも嗅覚が圧倒的に優れており、夜など目が効かないところでも、ハンティングができたのではないかと言われている。
暗闇でも簡単に獲物を嗅ぎ分ける嗅覚。おそろしい。
・超肉食恐竜
恐竜史を見ても常軌を逸したこれらの肉食性能や、その巨体や成長速度など、ティラノサウルスは他の恐竜を明らかに圧倒する。
なので、多数いる肉食恐竜の中でも、ティラノサウルスだけが「超肉食恐竜」と学術的に分類される事があるらしい。
なぜ超肉食恐竜なのか、本書には他に沢山書かれているが、全部は書ききれないので、ほんの一部だけをメモ的に書いてみた。
・まとめ
ティラノサウルスは、ただ単純に映画やマンガ・アニメなどで強い恐竜として描かれるキャラクターというイメージだけではない。
実際に地球が誕生してから現在に至るまでとんでもなく長期間を眺めてみても、ティラノサウルス以上に生態系の頂点に君臨した生物はいないわけである。
恐竜という枠組みを超えて、全生物的にも突出した存在だったのが、ティラノサウルスだったといえる。
本の紹介をありがとうございます。
別の記事でヒットし、私も恐竜が大好きだったので興味を持って読ませていただきました。
恐竜が1億5000万年間も存在していたことを初めて知り、驚愕。
すごい!
ティラノサウスはどうやって進化していったのか、とても興味が湧いてきました。
ありがとうございます。