土曜日の午後。
京都から大阪方面へ向う用事があり、電車で大阪方面へ向う事に。
駅で梅田(大阪)方面行きの電車を、乗車列に並んで待っていた。
私が並んでいた乗降口では、私とスーツを来た若いサラリーマン風男性の二人。
ほどなくして梅田行き電車が入って来て電車に乗り込むと、車内は意外と混んでて座れそうもなく、
長い横一列の座席シートの前の吊革を持って立つ。
若いスーツの男性も私とは離れた場所で吊革を持って立っていた。
とりあえず、電車に揺られながらイヤホンを取り出してiPhoneでポッドキャストを流し聞きしていると、
左側の遠くの視界に子供が楽しそうにしている光景が入ってくる。
小さな男の子(3歳くらいだろうか)が、座席の上に立って楽しそうにお外を見ながら、色んなモノを指差してなんか言ってる。
お母さんは、子供の座席の前で吊革を持って立っている。
私:「見える光景全部が新鮮で楽しいんだろうな。かわいいな〜。」
ふと目をやると、子供ちゃんの隣には若いお姉さん(20代半ばくらい?)が座席に座っていた。
白いスカートを履いて、ちゃんとおめかし(言葉古いな)してる。
私:「おしゃれしてるな、今から梅田でデートかな。」
そんな事を思いつつ、そのままポッドキャストの番組を聞き続けていると、
子供ちゃんの「お外の世界の楽しさ」が最高潮に達してきたようで、いよいよ座席の上で飛び跳ねたりしはじめた。
私:「まぁ、無邪気で元気でいいわな。」
そうこうしているうちに、時々子供ちゃんの足が隣のお姉さんに当たり始める。
そして、よくよく見ると子供ちゃんは靴を履いたままだ。
お姉さんは、時々子供ちゃんの靴で踏まれちゃってる。
しかし、お母さんは知らないふり。
私は遠目に、お姉さんの白いスカートが汚れないか少し心配になる。
お姉さんも子供の事だから何も言えないのだろうか、子供ちゃんがぶつかってきても笑顔を心がけようとはしている・・・が、どうしても苦い顔になっちゃってる。
そんな中、もう1人、同じように明らかに苦い顔をしている人に気がついた。
私と一緒に電車に乗り込んだ若いスーツの男性。
お姉さんの近くの吊革を持って立っていたが、ときどき子供ちゃんのお母さんに鋭い視線を向けている。
明らかに注意もせず放置しているお母さんにイライラしている感情が男性の表情から伝わってくる。
私(遠目に):「なんかあの辺、ちょっと雰囲気悪い感じになってきたな・・・。」
と思いつつ数分が経ち、途中駅に電車は停車。
「梅田デートなんじゃないかな?」と思っていた白いスカートのお姉さん、停車駅で物凄いスピードで降りていった。
私:「梅田までまだ何駅もあるけど、本当にココが目的地だったのかな・・・。」
電車がまた動きだし、子供ちゃんの隣の席は空いたまま。
しばらく誰も座ろうとしなかったが、突如として例の若いスーツの男性がその席にドカっと座る。
まるで何か言いたげな座り方だ。
もちろん子供ちゃんはお外の世界がまだまだ楽しい。
目に入る家々、看板、公園なんでも楽しいのだろう。
嬉々として飛び跳ねている。
そんな中、隣に座ったスーツ男性にも子供ちゃんの手や足が当たり始める。
私:「おっと、これは不穏かも・・・。」
スーツ男性はどうするんだろうか、と思って見ていると、スーツ男性は子供ちゃんが当たってきたら押し返した(一応やんわりと)。
私:「いや、気持ちは分かるけど、、、そこは言葉にしてあげたほうがいいんじゃなかな・・・・」
それを見た子供ちゃんママが何かを察したらしく、動く。
座席に立っている子供ちゃんとスーツ男性の間に無理やり自分が座って、子供ちゃんを守るママ。
大切な息子を抱きかかえて自分の身を挺してスーツ男性と子供の間を取る。
そして、ママは横に置いていたベビーカーを自分の元にたぐり寄せ防衛体制を整える。
その時、ベビーカーがスーツ男性の足を踏む。
スーツ男性はイラッと来たのか、ママを少しだけ押し返す。
ママは睨み返しながら、負けじと押し返す。
スーツ男性も負けじと押し返す。
ママはまた睨み返し押し返す。
私:「かなり嫌な感じになってきた・・・。車内の雰囲気も悪くなってきた。」
これどうすべき?やっぱり仲裁したほうがいい?
とは言え、私は少し遠い位置にいる。
火花がバチバチ散っている場所の周りには吊革持って立っている乗客も結構いるし、もう少ししたら誰か仲裁するのか?
遠目とは言え、もはや聞いてるポッドキャストの内容なんて全く頭に入ってこない。
そんな攻防がずっと続いたまま、次の停車駅で電車が止まる。
駅では降りる人は1人もいなかったが、1人だけ60代くらいのおじさんが乗ってきた。
そのおじさんは、両手にパンパンに膨れたスーパーの袋を持っている。
しかし、パンパンになっている両手のスーパーの袋をよく見てみると、空き缶・空箱などが一杯詰まっている。
と言うか、空き缶・空ペットボトル・空箱などしか入っていない、明らかに全てがゴミである。
「袋パンパンのゴミを両手に持った謎おじさんの登場。」
私:「いや、この状況に登場するにはキャラ強すぎる・・・」
そして、ゴミおじさんは、あろうことか「ママvsスーツ男性の攻防エリア」の目の前に立ってしまった。
電車出発。
私:「ああ、地獄・・・。」
もちろん、ママとスーツ男性の攻防戦はまだ続いている。
当然、目の前に立ったゴミおじさんはその攻防戦に気が付き始める。
攻防を見ていたゴミおじさんは、明らかに顔に苛立ちが滲み出始める。
そして、ゴミおじさん発火。
両手の大量のゴミをスーツ男の顔の前に持ってきたり、わざと男の足に当てたりしはじめた。
スーツ男性はママと押し合いをしつつ、ゴミおじさんからも攻撃を受ける。
おそらくゴミおじさんから見ると、スーツの男は、子育て中のママの大変さも理解せず優しくできない不届き者。
(実際はどういう動機かは私には分からないが、あのタイミングで電車に乗ってきたら確実にそうにしか見えないだろう。)
確実にママの援護であろう。
しかし、ゴミおじさんのゴミ攻撃が時々ママにも届いてしまいママもちょっと困惑。
こうして三つ巴の攻防が始まってしまう。
もはや、誰が正しく誰が間違っているのかすら分からない状態。
おそらく、それぞれがそれぞれの善悪の理屈を持って動く。
それぞれの正義と正義のぶつかり合い。
完全なカオス・・・。
そして、カオスとなった三つ巴の静かな攻防を見ていられなくなってきた辺りで、私は目的地に着いた。
まだ続く正義の火花を後ろに、後ろ髪ひかれる思いで降りて行く(何かできたのではないか)。
結局、それぞれの使命を賭けた聖戦を最後まで見届けることは出来なかった。
その後、物事は何か良い方向に動いたのであろうか。
降りた後も割り切れない気持ちがずっと続く。
一体、何が良くて何が悪かったのか。
ただ一点、はっきりした疑いのない事実はある。
私もあのシーンにおける「途中乗車の人間」ってことだけは。
(「まぁまぁ」とやんわり声かけくらいしておけば良かったな〜。)