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子育てママ vs サラリーマン、そして正義の味方?

土曜日の午後。

京都から大阪方面へ向う用事があり、電車で大阪方面へ向う事に。
駅で梅田(大阪)方面行きの電車を、乗車列に並んで待っていた。

私が並んでいた乗降口では、私とスーツを来た若いサラリーマン風男性の二人。
ほどなくして梅田行き電車が入って来て電車に乗り込むと、車内は意外と混んでて座れそうもなく、
長い横一列の座席シートの前の吊革を持って立つ。

若いスーツの男性も私とは離れた場所で吊革を持って立っていた。

とりあえず、電車に揺られながらイヤホンを取り出してiPhoneでポッドキャストを流し聞きしていると、
左側の遠くの視界に子供が楽しそうにしている光景が入ってくる。

小さな男の子(3歳くらいだろうか)が、座席の上に立って楽しそうにお外を見ながら、色んなモノを指差してなんか言ってる。
お母さんは、子供の座席の前で吊革を持って立っている。

私:「見える光景全部が新鮮で楽しいんだろうな。かわいいな〜。」

ふと目をやると、子供ちゃんの隣には若いお姉さん(20代半ばくらい?)が座席に座っていた。
白いスカートを履いて、ちゃんとおめかし(言葉古いな)してる。

私:「おしゃれしてるな、今から梅田でデートかな。」

そんな事を思いつつ、そのままポッドキャストの番組を聞き続けていると、
子供ちゃんの「お外の世界の楽しさ」が最高潮に達してきたようで、いよいよ座席の上で飛び跳ねたりしはじめた。

私:「まぁ、無邪気で元気でいいわな。」

そうこうしているうちに、時々子供ちゃんの足が隣のお姉さんに当たり始める。
そして、よくよく見ると子供ちゃんは靴を履いたままだ。

お姉さんは、時々子供ちゃんの靴で踏まれちゃってる。

しかし、お母さんは知らないふり。

私は遠目に、お姉さんの白いスカートが汚れないか少し心配になる。

お姉さんも子供の事だから何も言えないのだろうか、子供ちゃんがぶつかってきても笑顔を心がけようとはしている・・・が、どうしても苦い顔になっちゃってる。

そんな中、もう1人、同じように明らかに苦い顔をしている人に気がついた。
私と一緒に電車に乗り込んだ若いスーツの男性。
お姉さんの近くの吊革を持って立っていたが、ときどき子供ちゃんのお母さんに鋭い視線を向けている。

明らかに注意もせず放置しているお母さんにイライラしている感情が男性の表情から伝わってくる。

私(遠目に):「なんかあの辺、ちょっと雰囲気悪い感じになってきたな・・・。」

と思いつつ数分が経ち、途中駅に電車は停車。
「梅田デートなんじゃないかな?」と思っていた白いスカートのお姉さん、停車駅で物凄いスピードで降りていった。

私:「梅田までまだ何駅もあるけど、本当にココが目的地だったのかな・・・。」

電車がまた動きだし、子供ちゃんの隣の席は空いたまま。
しばらく誰も座ろうとしなかったが、突如として例の若いスーツの男性がその席にドカっと座る。
まるで何か言いたげな座り方だ。

もちろん子供ちゃんはお外の世界がまだまだ楽しい。
目に入る家々、看板、公園なんでも楽しいのだろう。
嬉々として飛び跳ねている。

そんな中、隣に座ったスーツ男性にも子供ちゃんの手や足が当たり始める。

私:「おっと、これは不穏かも・・・。」

スーツ男性はどうするんだろうか、と思って見ていると、スーツ男性は子供ちゃんが当たってきたら押し返した(一応やんわりと)。

私:「いや、気持ちは分かるけど、、、そこは言葉にしてあげたほうがいいんじゃなかな・・・・」

それを見た子供ちゃんママが何かを察したらしく、動く。
座席に立っている子供ちゃんとスーツ男性の間に無理やり自分が座って、子供ちゃんを守るママ。
大切な息子を抱きかかえて自分の身を挺してスーツ男性と子供の間を取る。

そして、ママは横に置いていたベビーカーを自分の元にたぐり寄せ防衛体制を整える。

その時、ベビーカーがスーツ男性の足を踏む。

スーツ男性はイラッと来たのか、ママを少しだけ押し返す。
ママは睨み返しながら、負けじと押し返す。
スーツ男性も負けじと押し返す。
ママはまた睨み返し押し返す。

私:「かなり嫌な感じになってきた・・・。車内の雰囲気も悪くなってきた。」

これどうすべき?やっぱり仲裁したほうがいい?
とは言え、私は少し遠い位置にいる。
火花がバチバチ散っている場所の周りには吊革持って立っている乗客も結構いるし、もう少ししたら誰か仲裁するのか?
遠目とは言え、もはや聞いてるポッドキャストの内容なんて全く頭に入ってこない。

そんな攻防がずっと続いたまま、次の停車駅で電車が止まる。

駅では降りる人は1人もいなかったが、1人だけ60代くらいのおじさんが乗ってきた。

そのおじさんは、両手にパンパンに膨れたスーパーの袋を持っている。

しかし、パンパンになっている両手のスーパーの袋をよく見てみると、空き缶・空箱などが一杯詰まっている。
と言うか、空き缶・空ペットボトル・空箱などしか入っていない、明らかに全てがゴミである。

「袋パンパンのゴミを両手に持った謎おじさんの登場。」

私:「いや、この状況に登場するにはキャラ強すぎる・・・」

そして、ゴミおじさんは、あろうことか「ママvsスーツ男性の攻防エリア」の目の前に立ってしまった。
電車出発。

私:「ああ、地獄・・・。」

もちろん、ママとスーツ男性の攻防戦はまだ続いている。
当然、目の前に立ったゴミおじさんはその攻防戦に気が付き始める。

攻防を見ていたゴミおじさんは、明らかに顔に苛立ちが滲み出始める。

そして、ゴミおじさん発火。
両手の大量のゴミをスーツ男の顔の前に持ってきたり、わざと男の足に当てたりしはじめた。

スーツ男性はママと押し合いをしつつ、ゴミおじさんからも攻撃を受ける。
おそらくゴミおじさんから見ると、スーツの男は、子育て中のママの大変さも理解せず優しくできない不届き者。
(実際はどういう動機かは私には分からないが、あのタイミングで電車に乗ってきたら確実にそうにしか見えないだろう。)
確実にママの援護であろう。

しかし、ゴミおじさんのゴミ攻撃が時々ママにも届いてしまいママもちょっと困惑。

こうして三つ巴の攻防が始まってしまう。

もはや、誰が正しく誰が間違っているのかすら分からない状態。
おそらく、それぞれがそれぞれの善悪の理屈を持って動く。
それぞれの正義と正義のぶつかり合い。
完全なカオス・・・。

そして、カオスとなった三つ巴の静かな攻防を見ていられなくなってきた辺りで、私は目的地に着いた。

まだ続く正義の火花を後ろに、後ろ髪ひかれる思いで降りて行く(何かできたのではないか)。

結局、それぞれの使命を賭けた聖戦を最後まで見届けることは出来なかった。
その後、物事は何か良い方向に動いたのであろうか。
降りた後も割り切れない気持ちがずっと続く。

一体、何が良くて何が悪かったのか。

ただ一点、はっきりした疑いのない事実はある。

私もあのシーンにおける「途中乗車の人間」ってことだけは。

(「まぁまぁ」とやんわり声かけくらいしておけば良かったな〜。)

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日本一大きく、そして、日本一寂しい大仏さん

日本一大きな大仏って奈良?鎌倉?

よく「奈良の大仏」と「鎌倉の大仏」どちらが大きい?
というクイズがあったりする。

答えはどっち?

正解は、奈良の大仏さん。

奈良の大仏(東大寺の大仏さん)が、14.98m(約15m)。
鎌倉の大仏(高徳院の大仏さん)が、11.31m(約11m)。
ということで、奈良の大仏さんのほうが、3mも大きい。

やっぱり奈良の大仏さんデカいねー。

さすが、東大寺(奈良)の大仏さん、「坐像(座っている大仏)」で日本一大きくて有名なわけです。
(「立像(立っている仏像)」で一番大きいのは牛久大仏120mだけど。)

小学校の修学旅行で奈良の大仏さんを見たときは、子供ながらに「でかい!すごい!」って思ったよね。

そして、それ以降ずっと「大仏といえば奈良の大仏さん」だったわけだけど、先日、その常識に対して考えさせられる衝撃の事実に直面した。

福井県の大仏さん

それは、2017年のゴールデンウィークのど真ん中。
「恐竜好きの聖地」として有名な福井県立恐竜博物館まで旅をした日のこと。

(博物館の中で動くティラノサウルス)

恐竜博物館からの帰り、まだまだ時間があったのでのんびりとお土産もの屋さんに寄ったりしていたら、
お土産のパッケージとか、お店に設置している観光マップとかにちょくちょく「大仏」って言葉でてくる事に気がついた。

しかも、なぜかやたらと「日本一の大仏」って書いている。
しかし、「福井県の大仏」って全く聞いたこと無いよな〜。

どういうこと?
そもそも、福井県に大仏さんがいるの??
しかも、「日本一」ってどういうこと??

特に自社仏閣や大仏さんが好きなわけではないんだけど、「奈良でも鎌倉でもない、福井県にある日本一の大仏?」ってのがあまりにも謎で気になったのと、
地図を見ると「恐竜博物館」から近いことがわかったので、ついでに大仏さんのお姿を拝見しに行ってみることにした。

大仏さんがあると言われる「大師山清大寺(全く聞いたことがない)」に着くと、とんでもなく大きな駐車場。
おそらく500〜600台は軽く入るのではないか。
その広さを前にして、直感的に「自分が知らなかっただけで、これは高名なお寺に違いない!」と思ってワクワク。

ただし・・・。

駐車場に止まっている車は1台・・・。
時は、ゴールデンウィークのど真ん中。

さっきの恐竜博物館なんて、駐車場待ちの行列ができてたのに・・・。

「恐竜目的以外の観光客って少ないのかな〜」なんて思いつつお寺の前の「門前町」の入り口まで歩いていく。

京都に住んでると有名なお寺の門前町とかは、お土産物屋とか飲食店とかのお店がズラーっと軒を連ねて活気があるわけだが、
まぁ、この駐車場の感じだと観光客も少なめで、お土産物屋さんとかもそんなにないのかな・・・、と思いつつ門前町の入り口にたどり着いてみると・・・
以下のような光景が。

うん??

・・・頭が混乱する。
京都の清水寺の二年坂・三年坂のように「お土産物屋が軒を連ねている」というイメージはもともと全くなかった。
なので、すぐにお寺への入り口かあるのかと思ったが、意外とそうでもなく、予想外に「お土産物屋さんが軒を連ねる門前町」が目の前にある。
参道の両側にお店がたくさんある・・・。

しかしだ・・・。
お店が一軒も開いてない。

すべてのお店のシャッターが下りている。
一軒残らず。

今日は町全体の定休日??
定休日にきちゃったかな?

あまりにも気になって、一軒づつよくよく観察してみると、どうもお店の看板が「裏返し」になっている。

つまりこれは・・・「定休日」ではない、、、
確実に、全店閉店(廃業)している?

これだけのお店があったことを考えると、昔はたくさんの参拝者で賑わっていたのかもしれない。
しかし、「何かの理由」によって、どうやら今の門前町は「廃墟化」しているようだ・・・。

しかも、駐車場には車が一台しかなかったが、この参道を歩いているのも私一人。

おいおい大丈夫か?ここ?

「もしかして、本当は大仏なんてないんじゃないの?」
「そういえば、自分の他に参拝者が誰一人としていないんだけど?お寺やってる?」
「え?なんか騙されてる?」

などと、考えつつ、
廃墟と化した門前町で、自分一人しかない状態に軽くビビりながら、拝観券売り場まで行き「第一寺人発見」。

第一寺人:「拝観料500円になりますー。」
私:「500円ですね。はい。」
第一寺人:「ごゆっくりどうぞー。」
私:「あ、あの、、、」
第一寺人:「・・・・」

・・・聞けなかった。
とても聞ける雰囲気ではなかった。
「なぜ門前町がこんなに荒廃してしまったのか・・・?」なんて。

とはいえ、騙されているわけではない。
なぜなら、目の前には素晴らしい巨大な仁王門が。

そして、仁王門の中には、東大寺にも負けるとも劣らない巨大仁王像が左右に二体どーーん。

(参拝者が私しかいないので、大きさ比較ができずわかりにくいがとにかくデカイ。)

そして、仁王門をくぐると、はるか先に超巨大大仏殿がどーーん。

(なんども言う、人がいないので大きさがわかりにくが、デカイ、広い。)

覚悟は決めて歩き出す。
こうなれば、もはや大仏とタイマンである。

中に入ると、大仏さん登場。
(大仏さんの写真撮影をしても良いのかどうかわからなかったので、パンフレットの写真。)

かなり大きい。
しかも、そのどデカイ大仏の周りを1メートルくらいの仏像が無数に配置されている。
圧巻の光景である。

パンフレットを見ると、無数の仏像は1,281体あるらしい。
千体以上の仏像・・・まさに、「無数の仏像」。
さらに、パンフレットを見ると、仏像の大きさが17.00mとなっていて、「奈良の大仏よりも大きい」と書いている。

なんと、本当に日本一大きな大仏である。

色々とわけが分からなくなってくる。
日本一の大仏は「奈良の大仏」だと学校で習って育ってきた。

しかし、私は、奈良の大仏よりも大きな大仏と現実に対峙している。
タイマンで・・・。

いまここに日本一大きな大仏が存在し、しかし、学校では奈良の大仏が日本一であると教えられる。

「なぜこの目の前にいる大仏はほとんど誰にも知られずにひっそりと存在しているのか?」
「なぜこの目の前にいる大仏は社会的にその存在を抹殺されなければならなかったのか?」

色々と考えを巡らせつつ、パンフレットを開くと大仏殿の近くに五重塔があると書かれている。
しかも、「京都の東寺の五重塔よりも大きい」と、、、つまり日本一大きな五重塔らしい。

マジかよ・・・。なんだここは・・・。

大仏殿をでると五重塔が見えたので歩いて行って登った。
もちろん、五重塔までの道のりの前後に参拝者も観光客もいない。
静寂の道のりである。

五重塔の最上階まで登ると、なんとついに先客が!!
若い男の子二人がベンチに寝そべってマンガを読んでいた。
(日本一高い五重塔のてっぺんで。)
意味わからん、、、スルースルー。

ある意味、ここでの読書は最高だろうな〜と思いつつ、写真をパチリ。

そこには福井県勝山市の気持ちの良い光景。
左下に見えるのが大仏殿。
(写真:お寺の向こう側に一般の家屋が点在しているので、家の大きさと比較すると大仏殿の大きさがわかるかも。)

相変わらず下に他の参拝者の姿は見えないが・・・。

結局、一つ一つの造形物は本当に素晴らしいものばかりで圧巻。
正直なぜ「廃墟化」しているか、さっぱり理解できないままこの山を降りた。

ちなみに、帰り際に受付の前を通ったら、一組だけ観光客が拝観券を買っていて「御朱印帳」を渡していた。
一応御朱印もあるみたいね・・・。

では、この大仏は一体なんなのか?

調べてみた所。
この大仏は「越前大仏(えちぜんだいぶつ)」と呼ばれ、近隣ではそこそこ知られているらしい。

大仏の大きさが日本一であるのも事実であり間違いない。
(坐像として、そして五重塔も)

では、なぜこの寺は廃墟化していたのか。
そして、なぜこの大仏は社会的に抹殺されているのか。

結論的には、その出自にあるようだ。

このお寺(大仏を含め)は、「多田清」という人物がビジネスで成功しその資材を投げ打って(総工費380億円)、昭和六十二年に立てたものらしい。
なるほど、かなり新しい建造物ということか。
でもって、私はこの多田清という人物を私は知らなかったが、大阪最大のタクシー会社「相互タクシー」の創始者だそうな。

つまり、由緒もなく歴史もないこの越前大仏は、社会的に抹殺されたのではなく、そもそも社会的・宗教的に認められていないということなのだろう。
文化財保護法でいうところの文化財にも含まれないから認定されないのかもしれない。
厳密にはどういう状況かは分からない。

ただ、そう考えるとこのお寺と大仏さんの荒廃っぷりというか廃墟っぷりに、ある程度の納得はいく。

歴史が浅く、宗教的な価値も薄い。
そうなってくると、どれだけ大仏が大きかろうと誰もありがたがらないわな〜。
奈良の大仏さんの持つ時代背景や物語・その壮大なる歴史と比べるなんておこがましいにも程があるレベルだろう。

やはり、「人の心を動かすにはモノではなく文脈(ストーリー)」なんだな、としみじみ。

とはいえ。

実際に目にすると圧倒される出来栄えだった。
仁王門、大仏殿、五重塔などの建造物や大仏を作った職人さんたちは、きっと魂を込めて作ったのではないのだろうか。
アレだけのものが、ちょっとやそっとで出来るものじゃないということは素人目にもわかる。

文脈が乏しく価値薄弱な大仏さんだけど、少なくとも彼(彼女?)にはなんの罪もない。
(なんか仏に罪っていう言う方も妙な感じだけど。)

そんな福井県勝山市の日本一大きい大仏さんは、
多くの人の目に触れることもなく、一人きりでひっそりと癒しの笑顔を贈り続けていた。

真の意味で俗世から離れ、心穏やかに人々の平和と繁栄を願っているのかもしれない。

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美容師とプログラマーに共通する「失敗するクライアントワーク」

先日、行きつけの美容室に髪を切りに行った時、サロンの店長さんと話した内容が少し印象的だったから軽くメモ。

基本的に、いつも髪を切ってもらいながら店長さんと話しているのは、日常的などうでもいいような話。
「あそこのコンビニのカラアゲが美味しい、あっちは美味しくない。」とか「あそこの角に、新しいカフェができるらしい」みたいな。

ただ、先日はいつもと違う話を美容師さんとしていた。

カットを終えて、セットをしてもらっている時の話

私:「(鏡を見ながら)こんなん言うのも失礼だと思うんですけど・・・、さすがの腕前ですよね〜。髪を切るの。」

店長さん:「(ハニカミながら)まぁ、もう十数年やってるプロですからね〜。」

私:「いや〜、いつも『全部おまかせ』で何も言わないのに、毎回上手にイイ感じに仕上げてもらえるから、すごいなーと思ってますよ。」

美容院でカットしてもらうけれども、髪型にあまり頓着しないので、いつも「店長さんにおまかせ」でカットしてもらっている。
(以前は、激安散髪屋とかも結構使ってたけど、髪の切れ端がガタガタだったり、左右揃ってなかったりと、「いい感じかどうか」という以前の「基本的な問題」が頻発したので、個人的に今の美容院に落ち着いた。)

続き。

店長さん:「実は、それって逆かもですねー。『おまかせ』してもらえてるから上手くできる部分もありますよ。」

私:「へぇ〜、そうなんですか?
でも、そもそも、店長さんくらいだったら、『今回のカットはダメだったなー』とか『納得いかないなー』なんて事は、ほぼないですよね??
失敗とかほぼ無いでしょ??」

店長さん:「うーん、そうですね~、なんていうか〜・・・・・、正直言うと、ありますよ(笑)。」

私:「え!?あるんですか?」

店長さん:「1年で軽く1000人以上カットしてますからね(笑)
そりゃ、ありますよね。。。。もちろん、まれに、ですけど!(笑)」

私:(確かに、一日平均5人カットして300日営業で、1500人か、、、たぶん、もっとだろうな・・・。そう考えると、凄い。。。などと、妄想しつつ・・・。)
「まぁ、確かにアレですよね・・・、毎日仕事してりゃ、風邪気味とか体調が悪いとか、そういう時もありますしね。人間だから仕方ないっていうか(笑)」

店長さん:「ははは、さすがにそれは関係ないっす(笑)
体調管理とか自己管理の問題であって、また別ですね。体調不良にならないようにすごく気を使ってます!接客サービスですからね、そこは重要ですよ。」

私:「じゃ、沢山髪切ってりゃ、そりゃ稀に失敗することもあるさ、っていう感じですかね?単に『確率論』的な?」

店長さん:「そういう感じじゃないですねー。実は、『失敗したなー』と感じる時とか、イケてない感じになる時って、ほぼパターンが決まってるんですよ。あくまでも僕の中で、ですけど。」

私:「ほぉ!失敗パターンってのがあるんですか、それって面白いですね!(興味津々)それってどういう時なんですか!?」

店長:「うーん、なんて説明したらいいですかねー、『お客さん自身がどうしたいのか、どうしたらいいのか分かってない時』っていうか『決めきれていない時』というか。そういう場合、たまに納得が行かない髪型になることがありますね。」

私:「でも、それって、僕も全く分かってないし、なーんも決めてませんよ??(だから、おまかせなわけで。)」

店長:「いや、お客さん(私)の場合は、『全部おまかせ』してくださるじゃないですか。
むしろ、その場合が、一番上手く行きます。一番チカラが発揮できるというか(笑)
そうではなくて、お客さん自身が、自分でどうしたいか分かってなかったりスタイルも決めてもいないけれども、カット中に都度都度、細かいスタイルのオーダーが入る場合ですかね。」

私:「『分かってないし、決めてもいないけど、注文が多い』ってことですか?
でも、細かいオーダーって普通じゃないですか?」

店長:「はい、それは普通ですよ〜。『お客さんがどうしたいか分かっていたり』『自分のスタイルやこだわりを持っている』時の細かいオーダーは、全く問題ないです。それに合わせて、僕もいい髪型に仕上げられます。」

私:「ですよねー。」

店長:「そうじゃない場合ですね・・・・『お客さんが何がしたいのか分かってない』場合ですー。
たとえば、髪型全体の事は置いておいて、『前髪の長さだけは残したい』という要望があった場合に、前髪の長さに合わせて、うまく全体を整えたところに、急に『どうしてもサイドは短くしたい』とかいう、チグハグなオーダーとか。
もちろん、お客様の要望に合わせて、最大限いい感じにカットを仕上げるわけですが、全体が整ってきた時にいきなり、なんていうか・・・、『全部の調和を台無しにするオーダー』が出ることがあります。
もちろん、こちらもプロですから一生懸命話をしたり提案したりしますけど、最後の最後は『お客さんの好み』を優先することになるので、『どうしたいのか良くわからない細かいオーダー』に答えているうちに、『これはさすがにいかがなものか?』という髪型になることがありますね。」

「で、結局、最後に私もお客さんもあまり納得いかない髪型ができているというダメなパターンです。」

「一言で言うと、『分かってないのに自分で決めたい』みたいな時ですかね。」

「何度も言いますけど、可能な限りイイ感じに仕上げる努力はします!でも、そういう時が、失敗する可能性は高くなります(笑)
しかも、序盤でヤバイ雰囲気を察します(笑)」

私:「なるほどぉ〜。
『自分自身がよくわかってないのに、細かくオーダーはする、自分で決めたい』ですか・・・。
なんか、全く交わりがないような他業種の店長の話なのに、なぜか、めちゃくちゃ共感しちゃいました・・・。」

という会話・・・。

これってクライアントワーク全般の話では?

いつも通り、「世間話の延長」くらいな気持ちで「美容院の店長さんが失敗するパターン」の話を聞いていたつもりだったんだけど。

この失敗パターンを聞いて、これってソフトウェア開発やWEB開発、デザインなど、自分のいる業界において、いつも問題なっている話そのものじゃないか!と。

そして、美容室とプログラマーという似ても似つかない業種同士であったとしても、同じ認識を持つってことは、おそらくその他の「クライアントワークに関わる全ての業種」にも通じるのではないか?と思ってしまった。

もちろん、この話は、プロと名乗ることができるレベルのスキルをキチンと持った人の話だとは思う。
経験不足の美容師やスキル不足のクリエイターが、失敗を自己正当化するために、「お客さんの要望が曖昧だったので〜」という話を引き合いに出すのはお門違いだろうと思うが。

どちらにしろ、「如何にクライアントと一緒に納得のいくものを作り上げるか」というモノは、どのようなクライアントワークでも最大の課題なのだろう。

ある意味、最近のWEB業界でのUXブームってのは、ここに一つの理由がある。
WEB・アプリ・サービスのユーザー体験を高めて、成果物の価値を最大化することができるってことが、1次的には言われるわけだけど。
実は、2次的な意味のほうもかなり重要だったりする。

制作へ丸投げではなく、設計にクライアントさんが参加することで、クライアント自身も深く考え、一つ一つ決定していくプロセスに関わる。
それによって、クライアントが十分納得の行く成果物になる。

この深い納得が得られるってのは、目に見えない価値を作る業界ほど、重要度がめちゃくちゃ高いしね。

そういう意味では、
サロンでも、WEB制作でも、「お客様と業者」という関係で物事を見るよりも、「一緒に価値を作るパートナー同士」と「両者が思え」たほうが、きっと上手く行く可能性が格段に上がるだろうね。
そして、それは、とても広く(いろんな業種に)通用するお話だと思う。

あと、社会的にみても、「提供者」と「被提供者」という文脈ではなく、「パートナー」と捉えたら色々な事がスムーズに行くことも沢山あるだろうな。
(お互いの意識が大事。)

ポエムお粗末様でした。

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