「絵で見て分かるIoT/センサの仕組みと活用」が分かり易いかも

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ここ最近(1年以上)、IoTについての調べたり電子工作したりと、本業(WEB系ソフトウェア開発)の傍らでIoTな活動もやってるので、IoT系の書籍がでたら基本的にはできるだけ片っ端から読むようにしている。
ということで、今回は、「絵で見て分かるIoT/センサの仕組みと活用 (著)NTTデータ」を読んだので、忘れないうちに感想を。

前回、「サルでもわかるIoT入門」っていう記事を書いたように、”IoT”って話が色々と多岐にわたっていて「一言で説明」するのが結構難しい。
そんな中で、本書は「エンジニアリング」の視点で非常に包括的で、良くまとまっていたと思う。

視点がエンジニア側になっているが、著者がNTTデータさんですから、当然ですな。
なので、「ビジネス視点」は、ほとんど無いけれども、これはこれで思い切ってエンジニアにフォーカスしてしまった「IoTの総論」としては非常に上手くまとめたなーという印象。

ただ、本書のターゲットは、あくまでも「IoT」を開発プロジェクトとして受託していこうと考えているSIerの経営者・SEさん・プロマネさんなのかな。
(「サービスアイデア」の出し方とか、考え方など、さっきも言ったように「ビジネス視点」「アイデア視点」では書かれていない。)
あくまでも「IoTの全体像」を「エンジニアリングの視点」で「俯瞰している」構成。

おそらく、本書ターゲットユーザー(読者)さんにとっては、知りたかった内容が全部載っているとても役に立つ良書になると思う。

IoTや電子工作に詳しいエンジニアが読んだら、かなり薄い内容に感じるとは思うけど(^^;

とまぁ、本書の全体の印象は、この程度にして。
自分の記憶のアウトプット作業のために、各章をまとめておくきたい。

 

1章:IoTの基礎知識

やはり、本書も第一章からいきなりIoTに関する個々の説明に入らずに、「まずは全体像の俯瞰」をしている。
(たとえ、IoTをエンジニアリングの視点だけで切り取ったとしても多岐に渡るから重要だよね。)
IoTは、①デバイス(センサ)②ネットーワーク③IoTサービス④データ分析という構成要素を持っている。
(なるほど・・・、大規模IoTサービス開発をメインテーマとして話が進んでいくんだろうな〜という「かをり」がする。)

 

2章:IoTのアーキテクチャー

IoTのサービス全体を支えるアーキテクチャーを解説。
デバイス・サーバー・分析処理などに使う実際のアーキテクチャーをまずはサラッと解説。

サーバープロトコルとしてはHTTPよりもMQTTを詳しく解説していたので、おそらくNTTデータさんはMQTT推しなのではないかと。
あと、データベースに関しても、リレーショナルDB・KVS・ドキュメント指向DB(MongoDB)など同じ分量で解説。
(でも、実は、MongoDBが結構気に入ってるんじゃないのかな?と読めたけど、笑)
ちなみに、Apache Hadoopは、知っていたけど、Apache StormやApache Sparkは知らなかった。
たしかに、大規模なIoTサービスになってくると、これらの大規模データ処理技術は必要なんだろうと参考になった。
(個々の細かい技術は、もちろん本書を最後まで読んでも載っていない。)

 

3章:IoTデバイス

いよいよ各論が始まる。

まずは、IoTの末端となる「デバイス」から解説。
プロトタイピング(試作機)用として、汎用マイコンボード(Arduinoなど)やシングルボードコンピュータ(Rasberry pi・intel Edisonなど)の概要説明。

また、様々なセンサの種類(光センサ・加速度センサ・距離センサ・温度センサ)を挙げつつ、各センサの仕組みを非常に平易に解説。

たとえば、赤外線距離センサは、赤外線を照射し、反射してきた光の入射角(角度)で距離を測っている、など。
(知っている人には当たり前だけど、知らない人や文系人間でも「なるほど!」と理解できる。)

また、センサが出力したアナログ信号を、増幅回路が信号を増幅し、マイコンボード上でアナログ・デジタル変換が行われ、最後に「数値化」される仕組みもわかりやすく解説されていて、ハードウェアに詳しくないWEB系エンジニアなどもセンサーの仕組みが容易に理解できるようになっている。

 

4章:高度なセンシング技術

3章では、距離センサとか温度センサなど比較的原始的なセンサーについての基礎解説だったけど。
ここでは、非常に高度なセンサ、たとえばRGB-DセンサやKinectセンサやLeap motionなどが解説されている。
特に、画像の距離認識については少々詳しく解説。

ちなみに、初めて知ったのだが、KinectやLeap Motionのような、人間のジェスチャーや音声などをユーザーインターフェースとすることを「NUI」というらしい。

確かに、IoTでは、「GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)」はあまり用いられないので、「GUI」の「G」をとって「UI(ユーザー・インターフェース)」と呼んでいたけど、「NUI(ナチュラル・ユーザー・インターフェース)」は結構使いやすい言葉。
(今後、ドヤ顔で「NUI」という言葉を使っていく。)

その他、皆さんがカーナビやGoogleマップなどでお世話になる「GPS」の位置情報の算出の仕組み。
これは、人工衛星と計算式の関係が解説されてて、雑学としても普通に楽しめる内容。
(知り合いが以前、「4基の人工衛星の電波を受信できたら自分の正確な位置がわかるんですけどねー」と言っていて、「なんのこっちゃ」と思っていたが、今なら対等に闘える)

 

5章:IoTサービスのシステム開発

この章こそが大手システム屋のNTTデータさんならでは。

デバイスからサーバーサイドまで、IoTシステムの「開発フロー」を解説。
IoTシステムの開発フローの総論をざっと俯瞰したところで、実際にNTTデータさんが開発したIoTサービスの事例を紐解く。
実際のサービス設計やサーバー設計など、浅すぎず深すぎず解説。
(個人的には、浅いと思ったけど、あまり深堀りすると本書のターゲットユーザーが変わってしまうだろう。)

「実際の開発・導入事例」を引き合いに開発・設計・保守・セキュリティーについて語られると説得力がある。

 

6章:IoTとデータ分析

IoTとビックデータ解析の話は切っても切り離せないよね。
センサを使って無数のデータを収集しても、そのデータを貯めたままだったら「デジタルゴミ」ですから(笑)
その無数のデータを分析するからこそ、非常に価値ある情報や体験が得られる。

データ分析の種類は大きく分けて3つ。
可視化 ②発見 ③予測

・可視化 : 収集データをグラフ化したりして「見える化」することで人がデータを認識できるようにすること。
・発見 : 収集データを統計解析・機械学習によって、人の目ではわからない傾向などをあぶり出す。
・予測 : 発見からさらに発展して、収集データから「未来を予測」する。

①の可視化は、エクセルの表計算のような円グラフや棒グラフなどで容易に想像がつく。
②③は高度な分析になるので、それらの分析手法について「概要」を解説。
(Jubatusという機械学習フレームワークは知らなかった・・・)

 

7章:IoTとウェアラブルデバイス

個人的には、一番退屈な章だったかな〜。

「ウェアラブルデバイスといえば?」と聞かれて。
Google GlassとかApple Watchとか、キックスターターで有名になったRingなどが思いつく人にとっては読む必要が無いかもしれない章。
逆に、それらのことをよく知らない人にとっては、「概略説明」ということで意味があるのだろうと思う。

 

8章:IoTとロボット

この書籍の中で、一番ページ数の少ない章。
だけれども、個人的には一番アツかった。

ロボットは、非常に多くの様々なセンサー(画像認識・音声認識・加速度・光・温湿度などなど)を備えていて、
それらのセンサー情報を蓄積し、分析して、アクションを起こす。

さらに、ソフトバンクのPepperに代表されるように、ロボットが集めたデータを中央サーバーで機械学習させ、自律的にどんどん賢くなって行く。
まさに、IoTの集大成というところかもしれない。

しかも、今では、ロボット開発用のオープンプラットフォームが幾つかあるらしい。(知らなかった)
誤解を恐れずにいうと、「まるでWeb開発のフレームワークやAPI」のように共通メソッドで、形状の異なるロボットを動作させることができるわけ。
共通の「前進メソッド」を実行すると、車輪型ロボット(お掃除ロボのルンバとか)は、車輪を回転させて前進するし、二足歩行ロボットは、同じ命令で二足歩行で前進するわけだねー。

こりゃもう確信せざるを得ない、ロボットをDIYする日もかなり近い。
(Robi君とは違う^^;)

おそらく、5年以内に「はじめてのロボットプログラミング入門」「10日できるロボット開発」なんていう書籍が本屋に並ぶな〜。

 

まとめ

最近、IoT系のネタを書くと、最後はいかがわしい終末論者か、オカルトライターみたいになってしまうのが悩みの種。
(シンギュラリティー信奉者じゃないけど^^;)

ただ、この本は、エンジニアの皆様はよくご存知「株式会社 NTTデータ」という大手SIさんの著書なんで、オカルトでも何でもないのでご安心を。

個人的には、一番のメインターゲットは、まだIoT開発実績がない中堅SIerのSEさんやプロマネさんあたりだと思うので、そういった方々が読むと「IoT開発の全体像」を掴めて今後の仕事の参考にもなるのではないかと思う。

どちらにしろ、IoTのエンジニアリングについて初心者にもわかりやすく解説してくださっているのは確かなので、IoTに興味がある幅広いIT関係者さんたちにとって読みやすい書籍だと思います。

絵で見て分かるIoT/センサの仕組みと活用 (著)NTTデータ

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